KO
📖
ぱたり、と閉じた本の奥の、瞳と目が合った。
読書灯の橙をゆらめかせてその目にたたえ、きらきらと潤んでいた。
気まぐれで天地を返す砂時計が、彼女の置いた本の横で、小さな山を作り終えて動かずそこに佇んでいた。
「あなたが、」
言いかけて、澱んだ。声を発することでこの部屋の空気に傷が入ってしまった気がした。
少女は口をつぐんだまま、私を見た。私よりもいくつか歳下だと聞いていたけれど、落ち着いた眼差しは、あまり歳の差を感じさせなかった。私がすっかり少女のまとう空気に飲み込まれていると、
「はじめまして。」
小さく掠れた声がばっちりと私の耳をとらえた。
「はじめまして。」
おそるおそる、挨拶を返す。少女は少し口許を動かした。不器用な微笑みの作り方だった。
「手紙を読みました。」
少女が小さく目を伏せ据わったまま会釈する素振りを見せる。私は慌てて頭を下げた。なぜだか、恥ずかしいような、決まり悪いような、そんな気がした。
「あ、ありがとうございます。」
少し頬が熱い。
今でもこのときの頬の熱さを覚えている。
鼓動の高まりを思い出す。
それが、彼女との出会いだった。
📖
このアルファベットは何なのかっていう全てのはじまりはこちらから。☟☟☟
http://observer-star8.hatenablog.com/entry/2017/11/30/200611
あなたをひとつのおはなしにします。☟