TH
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ふとした街中。
喧騒の中に足を踏み入れた主人公。
何気なく人の波を切るように足早に歩く。
いつもどおり。ただの日常。
だけどいつもと違ったのは、
通りすがったたったひとりの通行人。
時の流れがスローモーションになって、
めまぐるしい世界にひとり。
直感のような何かを微かに感じ取って、
思わず後ろを振り返る。
めまぐるしい世界にふたり。
ドラマでよくある、運命の再会。
現実でなど存在するとは到底思えないワンシーン。
もちろん、そんなシーンの主人公になれるだなんて思っちゃいない。
でも、今のこの状況はよく似ている、と思った。
気乗りしないままに臨んだ、友達に誘われただけの祝賀会で、何の気なしに泳がせた視線がぱっちりと合った女の子。
一瞬息を呑む。
よく似ていた。
五年前、高校卒業とともに顔を見かけることも、連絡を交わすことも、なくなったクラスメートに。
高二のときずっと続くと思っていた恋をしていたあの子に。
いるわけない、と思わず自嘲した。
人違いだ。
それは承知の上だった。
だって彼女は、
だけど、ふとした仕草や、聞き取れた話し口調の端々に五年前の記憶の片鱗が重なって、心を騒がせた。
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http://observer-star8.hatenablog.com/entry/2017/11/30/200611
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SY
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晴れた休日だ。カーテンを開けて家にいるのが惜しいと思ったと同時に、外へ出かける準備をした。朝ごはんは、おあずけ。今日は行きつけのカフェでモーニングを取ろうと決めた。
カラン、と聞きなれたベルの音。
いらっしゃいませ、という声を聞きつつ視線は既にメニューに落ちていた。頼むものは、決まっている。かしこまりました、と再び店員の声がする。注文したセットが出てくるまでの間にちらりと店内を見渡す。窓際の一番右の席。気づいたら毎回座る席。完璧だ。今日も空いている。
お待たせしました、の声と同時に小さくお礼を言ってトレイを受け取ると迷うことなく特等席へと腰掛けた。コーヒーをひとくち、喉を通した瞬間、安堵の息が漏れた。至福のひとときだ。
周りの音が耳に入る。二つ空けた先の同じ長テーブルの席らしい。大学生くらいの男女だった。
「雲みたいな人だよね。」
女の子の声がする。
「どういうこと?」
男の子が少し困ったふうに聞き返す。女の子は丁寧に、噛み締めるように付け足した。
「掴みどころがない。でも暖かい。」
「太陽じゃなくて?」
男の子が首を傾げると女の子がちょっと笑った。なんだか、苦笑混じりに、だけど、楽しそうに。
「太陽ほど眩しくないかな。晴れた日の雲だよ。どんよりしてるわけじゃない。すがすがしいけどさっぱりとはいかない。そんな感じ。」
女の子が窓越しに上を見上げているのが気配でも分かった。なんとなく、私も空を見上げる。なるほど、よく晴れた青空に小さな雲が点々と漂っている。
「褒められてるの、それ。」
男の子も空を見る。ちょっと不満げなのか、声が少しむくれている。長閑な朝だ。口許だけで微笑んで、そのままトーストを頬張った。変わらない味。手作りのジャムが心地よい甘さだ。
「褒めてるよ。」
女の子が一段と声を張った。見ていないけど、恐らく真剣な目つきをしている。男の子が、ちょっと女の子の剣幕に圧されているのも伝わった。
「う、うん。ありがと。」
女の子はしばらく黙っていたけれど、やがて
「太陽は紫外線があるじゃん。眩しすぎて直視できないし。私はずっと見れるほうがいい。」
と小声でぼそぼそ呟いたのをかろうじて聞いた。思わず吹き出しそうになる。
あぁ、いい朝だ。
私はもう一度コーヒーを口にした。
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灰桜
世界は美しくなんかない。
そしてそれ故に、美しい。
これは、「キノの旅 -the Beautiful World-」というライトノベルの主人公 キノの言葉。
キノの旅についてはこちらから:http://kinonotabi.com/
現在21巻まで出版されていて、まだまだ刊行中。
どんな話かというと、旅人であるキノが、なぜか人間の言葉を喋るモトラド、エルメスと一緒に旅をして多種多様な国を巡るというお話。
話としての繋がり、例えば新しく登場人物が出てきてその後も話に関わってくるなど、はあるけれども基本的に一話完結で、ひとつひとつの話はとても短く読みやすい。
何に惹かれるかってもちろんキノが旅人であるのはそうなんだけど、「言葉」が凄い。
なぜ旅を続けるのか
という問いにキノはこう答える。
止めるのは、いつだってできる。 だから、続けようと思う。
当たり前だけど、
忘れがちなことを
さらっと言ってのけてしまうのが
さすが主人公と言うべきか。
こうやって切り取るとまた違うのかもしれないけれど、文章として読んでいるとキノや周りにいる人たちは決して気取っているわけじゃない。そこはご自身の眼と感性にお任せしたいところ。
とも言われているので、ラノベに抵抗あるって人も是非一度手に取ってもらいたいお話。
今はアニメ放映中な様子。
http://www.kinonotabi-anime.com/
こういうワードを並べると敬遠する人が少なからずいるこのご時世なんだけど、言わせてもらいます。
不平をいう前に内容は知っておこう。
ああ、それから
旅人ならまず読もう。
出版社のキーフレーズは、
わくわくをはじめよう。
いや、もう読むしかなくないですか?
わくわくしたい人は読みましょう。
最後にもうひとつ、主人公の言葉から
あなたを幸せにするのは
最後はいつだってあなただ
白と青
今日ってなんの日 ?
本当はこれ、昨日やりたかった。
ただ、あまりにも(自分の注意力散漫で)課題が終わっていなさすぎて断念。
つまり言いたいことは
昨日、12月6日ってなんの日?
っていうなんとも気の抜けた感じに。
馴染みがない人もたくさんいると思うので、
答えを言います。
それも、今年は100周年。
聞いてもしっくりきてなさそう。
そして今日はちょっぴり世界史のお話になりそう。
じゃあ、まず、どこから独立したのか。
ロシアです。
フィンランドは1917年にロシア革命で(どさくさに紛れて)独立するまでの100年くらいずっとロシアのしたっぱにされていました。
名前はフィンランド大公国。
ちなみにこの大公国っていうのは
そのまま、大公が治めてる国って意味なんですね。
大公はロシアの皇帝が兼任です。
かっこよく言うと、同君連合。
なにしろ、ロシアの統治下なので。
といっても、そこまでガチガチに制限されていたわけでもないみたいです。
ちなみにロシアに獲得される前はスウェーデンの領土でした。わりと長いこと。なので、というべきか、フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語のふたつあります。
どちらにせよ習得するにはむずい。
(主にフィンランド語)
少し逸れちゃったけど、
フィンランドの独立に至るまでの概要はこんな感じです。
なんで急にフィンランドって
たぶん思ってるでしょ。
2週間ちょっとしたら
渡航することが決まっているからです。
そして、理由はよくわからないけど
好きな国
だから。
行ったこともないけど。
寒いよりあったかいほうがいいけど。
なぜだかすきなんですね。
すきってそういうもんか。
みなさんフィンランドって聞いて
何思い浮かべるんだろうなあ
サンタクロースかな。
サウナかな。
それともおしゃれなあなたはマリメッコ?
ハードメタルとかも割と有名なので
知ってる人は知ってるのかな。
いやでも、みんなのために持って帰るものはサルミアッキってすでに決めてるので。
とりあえずこのサルミアッキ、なかなかのスゴいヤツだからフィンランドから帰ってきたときにはみんなでコイツを囲んでわいわいしてほしい。
フィンランドっていう国自体についてのお話は、
いずれ現地に着いたら詳しく。
今はとにかく、
独立100周年おめでとうフィンランド🇫🇮
Hyvää itsenäisyyspäivää!
RI
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なりそこないの完璧主義者。
誰かが自分に向けてそういったことがあった。確か酒の場で、少し熱が入ったときだったように思う。そのときは反論した。
いつだって、最善の道を選んできたつもりでいた。
いつだって、正しいと確信した選択肢しか進んでこなかったはずだった。
そのときは、そうだった。
それなのに今あるこの感情は何だというのだろう。
負けたときの悔しい、に似ているけれど少し違う。
失敗したときの恥ずかしい、ともまた違う。
変に心がざわついて、落ち着かない。
全ては一つの出会いから。
ひとりの少女の笑顔から。
俺は、まだあの日から抜け出せないでいる。
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SK
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いつまでも変わらないもの。
青春の中の君。
君のことを好きだという気持ち。
いつまでも変えずにいてくれるもの。
君のSNSのホーム画面に残された君の笑顔。
私が撮った、卒業式の時の君の仲良しグループの集合写真。
君も私も、もうなんちゃっての苦笑混じりでしか制服を着ることはなくなったけれど、あのときのまだ実りきれていない果実の甘酸っぱさは今でも容易く蘇らせることができる。
不意打ちでシャッター音を響かせて、
クラスメートの笑顔を狙い打っては
みんなで楽しげに笑ったあの日。
どさくさに紛れて
遠くにいる君の笑顔をくすねたあの日。
ふっとカメラを向けると
周りにいる友達とふざけ合いながら
レンズ越しに
笑いかけてくれたあの日。
全部が全部、すぐそこにあるのに届かない宝物。
今は今で授業の空きコマに会える人で街中で合流、
夜になればお酒片手に近況報告、愚痴、雑談。
少し大人になった高校生だった私たちの楽しみ方。
幸せだとは思うけれど、
宝物が遠い場所にあると痛感する瞬間でもある。
唯一の救いは、君が同じ空間で一緒に笑っていること。いつまでも変わらないもの。いつまでも変えずにいてくれるもの。
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KO
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ぱたり、と閉じた本の奥の、瞳と目が合った。
読書灯の橙をゆらめかせてその目にたたえ、きらきらと潤んでいた。
気まぐれで天地を返す砂時計が、彼女の置いた本の横で、小さな山を作り終えて動かずそこに佇んでいた。
「あなたが、」
言いかけて、澱んだ。声を発することでこの部屋の空気に傷が入ってしまった気がした。
少女は口をつぐんだまま、私を見た。私よりもいくつか歳下だと聞いていたけれど、落ち着いた眼差しは、あまり歳の差を感じさせなかった。私がすっかり少女のまとう空気に飲み込まれていると、
「はじめまして。」
小さく掠れた声がばっちりと私の耳をとらえた。
「はじめまして。」
おそるおそる、挨拶を返す。少女は少し口許を動かした。不器用な微笑みの作り方だった。
「手紙を読みました。」
少女が小さく目を伏せ据わったまま会釈する素振りを見せる。私は慌てて頭を下げた。なぜだか、恥ずかしいような、決まり悪いような、そんな気がした。
「あ、ありがとうございます。」
少し頬が熱い。
今でもこのときの頬の熱さを覚えている。
鼓動の高まりを思い出す。
それが、彼女との出会いだった。
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