Y’s blog

届きますように、この言葉。

TS

 

 

 

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今を楽しめと人は言う。
納得はできる。
現に最善のルートを辿っている自覚はある。
楽しくないわけでもない。
しかしいつだってちらつくのは未来のことで、今ではない。
「私は戻りたいばっかなのにね。」
隣でふうっとため息をつくように紫煙が広がった。気づけば長い付き合いになっていたといっても過言ではない、兄の腐れ縁の女友達。ちらりと、こちらを覗くその顔は、口許に不敵な笑みを浮かべている。
「なに、そんなに追いつきたい何かでもあるわけ?」
彼女の少しも笑っていない瞳を静かに見つめる。しかしまたすぐに視線を外すと手元に遊ばせていた煙草を口にくわえて、手早くまた灰皿に戻した。特に意図があった訳でもないけれど、妙な沈黙が二人の空気を支配した。やがて、
「まあね。」
カラリ、と響くのは氷の音。
横目でグラスに目をやって、似ているな、と思った。
頑張っても超えられない壁がそこにはある。
這い上がりたくても、逃げ出したくても、非力さが勝つのみ。
でも、追いつきたいのは、
「君じゃないからね。」
半分嘘で、半分事実。
少々の、賭けであり駆け。
彼女はへえ、と楽しそうにまた口を歪ませる。傾げた首にさらさらとミディアムヘアのダークブラウンが滑らかに揺れた。
「興味ないけどさ。」

 

「楽しいよ、私は。見てるのがね。」
カラカラと楽しそうに笑う声を聞いて、黙ったままさっきの持論を訂正する。

 

半々なんて、理想であって、それも結局は強がりなのだ。

 

 

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このアルファベットは何なのかっていう全てのはじまりはこちらから。☟☟☟

 

http://observer-star8.hatenablog.com/entry/2017/11/30/200611

 

 

あなたをひとつのおはなしにします。☟

 

https://twitter.com/Lilja819/status/901791690415005696