黒
夜って不思議だ。
私はあまり好きではなかった。
小さいころ、
親の転勤で引っ越した私は毎晩
遠く離れた大好きな祖父母のことを
考えて泣いていた。
スキーでいつも一緒だった女の子と
別れるたびに大泣きしたのも
いつも夜だった。
夜空を見上げたとき、浮かぶ雲たちのいたずらで
地球じゃない違う大きな惑星が
すぐそばまで迫っているように見えたのが
幻想的で、こわかった。
目が慣れて、最初はひとつふたつだった星が
気づいたら数え切れないだけになっていくのが
こわかった。
途方もなく答えの出ないことを考え続けるのも
すべて。
闇は終わりが見えないように見せるのが上手い。
終着点はいつも以上に検討がつかない。
世界はどこまでも広がっているように錯覚する。
人って恐ろしく小さいんだと気付かされる。
そうか、人ってちっちゃいんだな。
当たり前のことに今やっと気づいた。