Y’s blog

届きますように、この言葉。

SY

 

 

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晴れた休日だ。カーテンを開けて家にいるのが惜しいと思ったと同時に、外へ出かける準備をした。朝ごはんは、おあずけ。今日は行きつけのカフェでモーニングを取ろうと決めた。


カラン、と聞きなれたベルの音。
いらっしゃいませ、という声を聞きつつ視線は既にメニューに落ちていた。頼むものは、決まっている。かしこまりました、と再び店員の声がする。注文したセットが出てくるまでの間にちらりと店内を見渡す。窓際の一番右の席。気づいたら毎回座る席。完璧だ。今日も空いている。
お待たせしました、の声と同時に小さくお礼を言ってトレイを受け取ると迷うことなく特等席へと腰掛けた。コーヒーをひとくち、喉を通した瞬間、安堵の息が漏れた。至福のひとときだ。
周りの音が耳に入る。二つ空けた先の同じ長テーブルの席らしい。大学生くらいの男女だった。
「雲みたいな人だよね。」
女の子の声がする。
「どういうこと?」
男の子が少し困ったふうに聞き返す。女の子は丁寧に、噛み締めるように付け足した。
「掴みどころがない。でも暖かい。」
「太陽じゃなくて?」
男の子が首を傾げると女の子がちょっと笑った。なんだか、苦笑混じりに、だけど、楽しそうに。
「太陽ほど眩しくないかな。晴れた日の雲だよ。どんよりしてるわけじゃない。すがすがしいけどさっぱりとはいかない。そんな感じ。」
女の子が窓越しに上を見上げているのが気配でも分かった。なんとなく、私も空を見上げる。なるほど、よく晴れた青空に小さな雲が点々と漂っている。
「褒められてるの、それ。」
男の子も空を見る。ちょっと不満げなのか、声が少しむくれている。長閑な朝だ。口許だけで微笑んで、そのままトーストを頬張った。変わらない味。手作りのジャムが心地よい甘さだ。
「褒めてるよ。」
女の子が一段と声を張った。見ていないけど、恐らく真剣な目つきをしている。男の子が、ちょっと女の子の剣幕に圧されているのも伝わった。
「う、うん。ありがと。」
女の子はしばらく黙っていたけれど、やがて
「太陽は紫外線があるじゃん。眩しすぎて直視できないし。私はずっと見れるほうがいい。」
と小声でぼそぼそ呟いたのをかろうじて聞いた。思わず吹き出しそうになる。

あぁ、いい朝だ。
私はもう一度コーヒーを口にした。

 

 

 

 

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